包み紙から広まった北斎 [雑談ネタ#22]

江戸時代の美術を代表する浮世絵に“風景画”という新ジャンルを切り開いたのは、『富岳三十六計』で知られる葛飾北斎(1760〜1849)。
北斎はオランダの風景版画からインスピレーションを得て風景画を始めたのだが、 この北斎の代表作<北斎漫画>が、今度はヨーロッパ絵画に大きな影響を与えることになる。

そのキッカケは、なんと陶器を包んでいた紙だというのだが…。
それはこういうことだ。フランスの版画家のブラックモンは工房で有田焼を目にするが、彼が魅了されたのは陶器のほうではなく、それを包んでいた緩衝材の紙。それこそが北斎のスケッチ画集<北斎漫画>だった。ブラックモンはその自由で正確な描線に驚き、マネやドガをはじめとする友人に見せて回ったらしい。


浮世絵版画の発見は、パリ画壇にとって大きな衝撃だったようだ。
単なるエキゾチックな日本趣味に終わらなかったことは、マネ、ドガ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャンなど印象派を中心とした画家たちに深い影響を与えたことからも分かる。

とくにゴッホは作品の背景に浮世絵をしばしば描き入れ、「僕の仕事はみな多少とも日本の絵が基礎になっている」「日本人は再現の抽象化をやる。平面的な色彩を並列させて、動きや形を独特な線で捉える」と、浮世絵の技法を賞賛している。