文豪モームはスパイだった [雑談ネタ#61]

『月と六ペンス』『人間の絆』などで知られるイギリスの作家サマセット・モーム(1874〜1965)は、実は英国情報部に勤める情報部員だったことが知られている。

モームが情報部員となったのは、『人間の絆』を書き上げたあと、第一次世界大戦開戦後のこと。ヨーロッパ各国の言語に通じる作家という職業柄、創作のタネ探しという口実に、どこへでも出かけられたから、情報部員としてうってつけだった。


彼の活動拠点はもっぱらスイスだった。1917年にはアメリカから日本を経由、シベリア鉄道で当時ロシアの首都だったペトログラード(現在のレニングラード)へ密使として派遣されている。
ボルシェビキ革命を阻止し、ロシアに対独戦争を継続させるため、ロシア国内の反ボルシェビキ政党と接触するのが任務だった。
この任務は、十月革命の勃発であえなく失敗に終わるが、モームの情報部員としての任務は、1918年に健康を損ねて療養生活に入るまで続いた。

情報部員としての体験はのちに短編集『アシェンデン』を生み出し、モームの文学に彩りを添えることになった。